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フリーゲーム「SAVE」はなぜ面白かったのか

先日、クトゥルフ神話をモチーフにしたフリーゲームSAVE」のレビューを書かせていただきました。個人的に久々のヒットといえるほど、気に入っている作品です。

ゲームの公開が先月の14日ですので、ちょうどリリースから一ヶ月が経過したことになります。

そこで、改めて私がこのゲームを好きな理由について、考えてみたいと思います。

基本的に、プレイ済みの方が観覧することを推奨します。

以下、重大なネタバレを含みます。

もぐらゲームスさんの紹介でも挙げられている通り、このゲームの魅力は物語とシステムが相互に影響し合っているところです。

強大な異形の力

主人公は、か弱い人間です。いくらレベルを上げたところでステータスは上昇しません。手っ取り早く主人公を強化するためには、黒服の男にお金を払いドーピングアイテムを購入したり、異形の身体を移植しなければなりません。

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こうして異形の力を扱うことによってはじめて、か弱い主人公は神話生物と対峙することができます。これを利用しないのは、とんでもない縛りプレイであり、攻略難易度が跳ね上がります。

シナリオ的にも、どんな手を使ってでも奪われた家族を取り戻したい主人公と、その強い意思が反映されたこのシステムは、非常にマッチしているといえます。

しかし

勘の良い方やクトゥルフ神話に馴染みがある方は、ゲーム開始直後に黒服の男を見てこう思ったことでしょう。

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「一体何ラトホテプなんだ……全然分からないぞ(棒」

初回プレイ時の私は、異形の身体を移植することの不気味さと、何より力を提供してくれるのが「このお方」だということに不安を覚え、黒服の店を利用しないことを決意しました。それが、長く苦しい戦いの始まりとも知らずに……

か弱い人間の力

黒服商店を利用しないと意気込んだは良いものの、現実はそう甘くありませんでした。ボスと戦うたびに、毎回手も足も出ず、頭を抱えることになりました。何故、初回プレイで、いきなり自分を追い込むような真似をしてしまったのでしょうか。

今からでも遅くないから、黒服の店でサクっと強くなりたい……何度もそう思いました。

それでもゲームを進め、次第にストーリーの背景が明かされてくると……GAMEOVERになり、心が折れそうになるたびにこう思うのです。

異形の力ではなく、自分の拳で家族を奪ったラスボスをぶん殴りたい!

しかし黒服の男に頼らない場合、強くなる手段は限られています。

  1. 良い装備を購入する
  2. 主人公のレベルを上げて攻撃・防御以外のステータスの微増
  3. 仲間のレベルを上げる
  4. 流離の武道家から技を教わる

装備を更新して強くなるのはRPGの基本ですね。攻撃力と防御力は装備で上げるしかありません。

次にレベルです。レベルは主人公の強さに直接結びつきませんが、最大HPや素早さなどは上昇するため効果が薄くても鍛えるしかありません。

そして、主人公には共に戦ってくれる心強い神話生物がいます。彼らは、ほんの少しずつですがレベルアップで強くなりますし、新しい技も覚えます。私はビヤーキーとショゴスに何度も命を救われました。

最後に、技を教えてくれる武道家です。主人公は戦士としても、魔法使いとしても運用することが出来ますが、困ったときに最後に物を言うのは己の拳です。

レベルを上げて物理で殴るのです。

この信条の元、私は積極的に武道家にお金を払い、物理技を覚えました。

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人の持つ可能性

今更ですが、公式ページの攻略情報を見ると、ラスボスが物理攻撃に耐性を持っていることも分かります。それでも努力は自分を裏切らないと信じ、ひたすら最後に武道家が教えてくれた、人の身で扱える最強の技「心臓通し」を打ち続けました。

こうして脳筋街道をひた走るプレイングをしましたが、やはり通常プレイに比べて間違い無く難易度は高いでしょう。苦労してゲームをクリアしたときには、大いに達成感を味わうことが出来ました。

クトゥルフ神話の世界観では、人間はとても矮小な存在です。ヨグ=ソトースなんていう、目を覚ましただけで世界が滅亡してしまう神もいます。そして、人間はちょっと神話的恐怖に触れただけで、正気度を失い再起不能になります。強い弱いという問題にすらならないくらい、神話存在と人間では次元が違うのです。

しかし、このゲームに限らず、クトゥルフ神話関連の創作やTRPGクトゥルフの呼び声」のリプレイを見ていると、そんな「神の強大さ」だけでなく「それでも立ち向かう人間たち」が描かれているからこそクトゥルフ神話は面白いのではないかと感じます。

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そして、私がこの作品を面白いと思った理由は

どんな手段を使ってでも家族を取り戻す

「家族愛」

ちっぽけな人間として神話存在に立ち向かう

「勇気」

プレイヤーの選択によって、そのどちらも楽しむことが出来る人間賛歌だからです。

 

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勇気

勇気