電子書籍業界におけるKDPという潮流
などという大それたタイトルをつけてみましたが、今回はKDP(Kindle Direct Publishing)について考えてみたいと思います。
きっかけは『開かれたフリーゲームと、その敵』を販売開始した際、フリーゲーム『キミはキメラ』製作者のhoshimi12さんに興味を持っていただいたことです。無印(Rが製作される前)からプレイさせて頂いた身としては、大変光栄です。
ここで詳しい経緯などを書くのは控えさせていただきますが、hoshimiさんは活動の場を移し、現在は電子書籍で新作を製作されているそうです。
そんな実力派クリエイターの反応をご覧ください。
(Kindle版まだですかね)>RT
— hoshimi12 (@hoshimi12) 2015, 4月 6
(あっ……)
いえ、決してKindleで販売することを忘れていたわけではありませんよ!
KDPって?
KDPとはAmazon Kindleストアで電子書籍を出版できるサービスです。2010年以降、KDPの登場により、誰でも手軽にコストをかけず電子書籍を世界中に販売できるようになりました。
電子書籍を販売する方法はKDPだけではありませんが、やはりAmazonの知名度というのは大変強力です。個人で電子書籍を販売するならKDPで、という方が多いのではないでしょうか。Twitterなどでも、表示名に@KDP作家と記載されている方もよく見かけます。今では「KDP作家」という一つのジャンルが確立されたように感じます。
はじめからKindle版を作らなかったワケ
そんなに一般的なら、何故最初からKindleでやらなかったのか、と思われるかもしれません。理由の一つは、Kindle版の作成から販売までの手続きが煩雑だったことがあります。しかし、一番の理由はお金でした。
KDPのロイヤリティレートは、35%と70%の選択制です。紙の本では高くても10%程度の印税と言われていますので、比較すると非常に高額なように感じます。
でも本当に35%ってお得でしょうか?契約内容にもよりますが、紙の本では印刷された部数から10%前後とよく言われています。執筆者は、実際にどれだけ売れたかに関係なく印税を受け取ることが出来ます。販売部数が振るわなかった場合でも、出版社が保証してくれるわけです。
これは極端な例えで、紙の本でも歩合制のように実売部数によって印税が決まる契約もあります。しかし、個人で電子書籍を販売しようとすると、実売部数に頼るしかありません。一冊も売れなかったとしても、誰も保証してくれないからです。
そう考えると、途端に35%という数字が心許なく思えてきます。それに、ニッチブックスのコンセプト的に、ニッチな題材を扱っているため「薄利多売」とは相容れなかったというのもあります。
KDPセレクトの落とし穴
35%と70%のロイヤリティが選べるなら70%を選べばいいじゃないか、と思いきや実はここにも問題があります。70%ロイヤリティレートを選択するには、KDPセレクトへ登録する必要があります。
KDPセレクトに関してよくある質問を見てみましょう。
Kindle での独占的な出版とはどういうことですか?
本を KDP セレクトに登録すると、登録期間中、その本の電子版を KDP で独占的に販売することを承認したものと見なされます。
KDP セレクトにより Amazon の独占販売となったすべてのコンテンツは、Amazon サイトでのみ購入できる状態でなければなりません。そのコンテンツの電子版を他のサイトで無料提供または販売することは一切できません。
oh...どうやら70%ロイヤリティを選ぶためにはKindle専売にする必要があるようです。別に「独占が気に入らない!」などと言うわけではありませんが、売り手としては販売場所の選択肢が多いに越したことはありません。そういった理由とAmazonの知名度を天秤に掛けた結果、「ひとまず最初にKindle版を作るのはやめておこう」ということになりました。
結局Kindle版は作るの?
作ります。
これを言うために、この記事を書きました。正直に言って、私達はAmazonの影響力をなめていました。一番知名度が高いということは、一番利用者が多いと言い換えることが出来ます。今まで利用したことが無いサイトでの買い物は、会員登録などの手間を考慮すると、ユーザーに負担を掛けているといえます。ですので、ロイヤリティが35%だろうが何だろうが、作るのが親切なのではないかと改めて考えました。
それに何より、元々の価格設定を高くしているのですから、まずは少しでも手にとっていただけるように努力したいと思います。
Kindle版の発売が決まった際には、また宣伝させていただきたいと思います。
追記:Kindle版発売!