リフローと固定レイアウトの混在が流行らない理由
デザイン性の高い電子書籍を製作するにあたって「基本的には自動で調整してくれるリフローだけど、画像を配置するページはデザインを崩したくないのでフィックス(固定レイアウト)にしたい」と思うことがあるかもしれません。
しかし、技術的に実現可能でも、こうした形式の電子書籍を見かけることは殆どありません。
そこで、今回その理由を探るべく、試験的に混在のEPUBを製作してみました。
参考:固定レイアウト/リフロー混在EPUB3を作ってみた | 電書魂
実際にEPUBを製作したことで、混在形式が今のところあまり実用的ではないことが判明しました。
販売場所が限定されている
まず、今回リフロー・固定レイアウトを混在させたいと考えた動機は、動画つきの電子書籍を製作したかったからです。
過去に「実際にEPUB3で電子書籍に音声や動画をつけてみた」際にKDPでは、動画や音声を埋め込んだ電子書籍を販売できないという話が上がりました。
そのため、大手のストアで販売しようと考えた場合、殆どiBooks Store一択となります。
混在に対応したビュアーが少ない
リフローの中に1ページだけ固定レイアウトという形の混在EPUBを製作し、PCで正常に観覧できることを確認しました。
そこで、そのファイルをiBooksで開いてみたところ、全てのページがリフロー形式で表示されました。
少し調べてみたところ、EPUB内の「META-INF」フォルダの中にある「com.apple.ibooks.display-options.xml」というファイルがiBooksでの表示を指定しているようです。
<display_options>
<platform name=”*”>
<option name=”fixed-layout”>true</option>
</platform>
</display_options>
固定レイアウト・リフローの表示変更自体は、上記xmlファイルのtrueとfalseを切り替えることにより可能です。
しかし、全てのページの表示形式を一括で指定することはできても、一部だけ指定することはできません。
固定レイアウトのみ・リフローのみを表示するぶんには問題ありませんが、iBooksでは混在形式のEPUBを正常に観覧することができないのです。
それでも混在を活用したい場合
このように、せっかく混在形式のEPUBを作っても対応したビュアーが少ないこと・KindleとiBooksという二大大手のストアで販売できないことが、リフローと固定レイアウトの混在が流行らない理由だと考えられます。
しかし、ChromeアプリのReadiumなど正常に動作確認が取れるビュアーも存在しています。
KindleやiBooksで販売できなくても混在形式を活用したい場合は、他のストアを利用することになります。
私たちは最初に電子書籍を販売した際、マーケットプレイス「DLmarket」を利用しました。
これは電子書籍専門のストアではありませんが、そのぶん厳しい審査などは無く、簡単に販売を開始できます。また、販売手数料も比較的少ないのが利点です。
欠点は、やはりKindleストアなどの大手と比較して知名度が低い事・普段利用していない人が多いため、購入者に新規会員登録の手間をかけさせてしまう事があげられます。
おわりに
ビュアーが~という話は、動画を埋め込んだ時にも出てきました。
製作の自由度が高い電子書籍ですが、まだまだ環境周りは整備されているとは言い難い状況です。
そう遠くない間に、販売・観覧が快適にできるように大手ストアさんには頑張って欲しいと思います。
混在するめぐみ―ポストコロニアル時代の宗教とフェミニズム (叢書文化研究)
- 作者: 川橋範子,黒木雅子
- 出版社/メーカー: 人文書院
- 発売日: 2004/05
- メディア: 単行本
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